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●THE PILLOWMAN マクドナー作品で一番好きな枕マン

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2005年のブロードウェイの時のチラシ。あんまりBウェイってチラシないんですけどね。
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2005年のブロードウェイの時のプレイビル。
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マーティン・マクドナー。かっこいいよね?
『THE PILLOWMAN』
(ザ・ピローマン)
ストーレートプレイ/ブラック・コメディー
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初演:ロンドン:Nov.13th, 2003

ブロードウェイ初演:
プレビュー:Mar. 21st, 2005
オープニング:Apr. 10th, 2005
クロージング:Sep 18th, 2005
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来月(2010年2月)からマーティン・マクドナーの新作が始まるっていうのに、私は日本に行かなくてはならないっっっっっ!ああ、観たい!マクドナーの新作が、観たいっっっっっっ!しかも、はじめてブロードウェイで初日を開けるワールド・プレミアな上に、はじめてアメリカが設定の話で、しかも、しかも主演がクリストファー・ウォーケン!どうにかして、観たい。どうしても観たい。観たいっっっっっっっ!

はい。というわけで、マクドナー作品。

『ピローマン』は、1970年イギリス生まれのアイルランド人の脚本家、映画監督のMartin McDonagh(マーティン・マクドナー)の作品。

この人は本当に凄い。手放しで「この人の作品は絶対観たい」という劇作家は、そうそういないのですが、この人のだけは観たい。2006年のアカデミー賞を取った短編映画は残念ながら観る事が出来てないのですが、いやー、ほんと、物凄く暗く黒い陰湿な迫力を持って観客を圧倒します。閉じていて、兄弟や親子や家族で殺し合って、虐待の過去やら病気やらの辛い過去があって、さらに虐待が起きて、ののしり合って、貧しくて救いようなくて、知的ハンディキャップ(障害者)、身体的ハンディキャップ、テロリスト、人種差別、介護問題、地方格差、虐待問題、民族紛争、地球上のあらゆるタイプの現実的な不幸を暴力的に板の上にあげて圧倒していきます。作品によっては、物凄ーい量の血が飛び交う大スプラッター。

観たくならないかもなぁ、ここまで書くと(笑)。

しかし、そこには話の芯がガッツリあり、テーマがあり、メッセージがある。

悲惨な話が進んで行く中、”はらり”と、人間の愛とか優しさが、こぼれおちてくる。非常に高級。

そして、これをブラック・コメディー、ってか、ダーク・コメディーで仕上げるのがいいんですねー。タランティーノの作品と共通点があると言えば、あるかもしれない。そういえば私は『トゥルー・ロマンス』とか『レザボア・ドッグス』とか好きだなぁ。

マクドナーはイギリスで生まれですが、アイルランド人の両親を持ち、幼少期に両親だけが故郷に戻ったので、夏の間は親のいるアイルランドにイギリスから毎年通ったそうですが、それは作品に大きく影響してます。マスコミ嫌いであんまり自分のこと話さないので、情報が少ないんですけれども(なかなかハンサムですよね。もっと出ればいいのに(笑))、幼少期、経済的にはかなり厳しかったようです。両親はアイルランド差別でイギリスから故郷に帰ったのですかね。どこにも行かない田舎の閉鎖性や、不幸のスパイラルの描き方は、大げさにやっているけれど、リアリティーがあるのは、アイルランドの田舎の風景の1つを芯にしているからなのでしょう。

社会問題がテーマの脚本って、体験してない人が書くと、結構そらぞらしい場合、多いからなぁ。

この『ピローマン』は、”どこで起きている話か”は限定出来ないですが、彼の他の作品はアイルランドを舞台にした話ばかりです。他の作品の時に記述しますが、あえて酷いアイルランド訛りをふんだんに盛り込んだ台詞は、とっても聞きにくいんだけれども、それこそがリアリティを醸し出す味。アイルランド差別、長い間常にテロリストが居た国、というのは、もうどうしようもなく行き場がなかったというのが、さりげない会話で伝わってきます。秋田の山奥で若者がいなくなっている中、介護で残った青年が秋田弁で「父親を殺した」って叫ぶんだけど、東京から来た人はわからないで「何言ってんだ?」と無視する、みたいな。

最近、日本では方言が流行っているようで(変なもの流行るなぁ)、映画でもガッツリ方言を使っている作品もあるようですね。方言って上手に使うと、大きな味付け出来ます。

もともとマクドナーは映画がやりたかった人なので、数年前に「しばらく映画をやる」宣言していて、今度の舞台『A Behanding in Spokane』は去年の1月に「やるよ」って発表してたから、やるんだろうとは思ってたんですが、でもきっとまた暫くは映画に行ってしまうんでしょう。


この『ピローマン』は、子供の虐待話で、テロリストやらアイルランド差別は出てきません。ストーリーは基本的に警察の取調室で展開していきます。


可哀想な子供が更に可哀想な事になっていく残酷メルヘンを書いている自称作家カトゥリアンは突然警察に連行されて取り調べを受けている。カトゥリアンは毎日、屠殺場で仕事をし、家に帰れば知的障害の兄の世話をして、そして小説を書く日々。警察に呼ばれて尋問されても、自分が何故取り調べを受けているかさっぱりわからない。そして、異様にいきり立っている刑事アリエルと妙に冷静でポーカーフェィスなトゥポルスキ刑事に、自分が書いた”子供虐待メルヘン”のストーリーと酷似した形で、殺人事件が起きており、子供が3人巻き込まれたということを聞かされる。

白状しないカトゥリアンにイラついた刑事アリエルが部屋を出て行くと、隣の取調室から拷問を受けて悲鳴を上げている男の声が聞こえる。戻って来た刑事アリエルから、悲鳴を上げていたのはカトゥリアンの兄・ミハイルで、兄が3つの殺人事件の犯人だと自供したことを聞かされる。

知的ハンディキャップで、まるで子供のような兄にそんなことが出来る訳がない。兄に会わせて欲しいと懇願するカトゥリアン。

そして、カトゥリアンが、残酷メルヘンばかり書く理由は、この兄弟の育てられ方に秘密があったことがわかる。

カトゥリアンとミハイルの両親は、カトゥリアンに素晴らしい小説を書かせる為に、カトゥリアンには兄の存在を知らせず一人っ子として育て、その隣の部屋で兄に虐待を7年間続け、その悲鳴を聞かせることで良い小説が書けるようになるかを”実験的”に行っていたのだった。



これは、ネタバレしてしまうと面白くないお話だし、また日本でやるかもしれないので(長塚圭史演出で以前パルコで上演したそうですね)、ストーリーは程々にしておきます。

でもって、脚本持ってたので、舞台の『ピローマン』の中に出て来るカトゥリアンの書いた童話『ピローマン』だけでも載せようと思ったのに、脚本が見つからない。他のはあるのに、、、、、、、。見つけたら追加アップします。

記憶だけ頼りに書くと「ピローマンは全身がフカフカの枕(ピロー)で出来ている。将来、残酷な目に合う子供達に寄り添って、つらいことが起きる前に、事故に見せかけて自殺させてあげている。ピローマンは自分の仕事が辛くて、自分の子供時代に戻って自殺させてあげることにするが、ピローマンが消滅する時に、自殺した子供達は蘇ってしまって、こどもたちは皆、将来残酷な目に合って死んでいく」という童話。

この作品では、カトゥリアンの書く物語が「子供の出て来る童話調の物語」というのが大きく全体を支配していると思います。グリム童話っていうのでしょうかね。子供も、現実も、理不尽な残酷さを持っています。でも、その「おはなし」性というか、「童話」性というのが、酷い酷い話を丸くして、非現実的にしていくので、全体的にも「おはなし」という雰囲気が出てきて、不思議にファンタジーな空気が出て来るんですね。出て来る虐待が「7年間弟に隠して虐待を続けた」とか、極端で非現実的だからかな。大げさな現実と非現実のバランスがとても良い。

マクドナーのような作家が生まれて、その才能をいかんなく発揮し、彼が20代の若さでキッチリと見いだされ、ウエストエンドで、そしてブロードウェイで数々の作品を世に送り出せている状態を作れるイギリスもアメリカも素晴らしい。さすが、イギリス。お芝居の国。羨ましい。マクドナーももう40歳だけれど。

日本はしっかりしたドラマや舞台を創らない方向に走ってしまっているので、こういう作品を書く勇気を若手の作家には持って欲しいですし、プロデューサーやスポンサーも、安易な笑いに逃げないで、きっちりと現実の世界の日常にある暗黒部を書かせてあげて欲しいですね。悩み抜いて書かれた作品が観たい。

笑いは必要です。でも笑えればいい、というのは、また違う話。

もちろん自分でも書きますけれども、自分の作品だけじゃなくて、観に行きたい。いい日本語の作品で感動したい。

書くのは大変。でも大変じゃなくちゃ書いてはいけないのです。

さて、私も書かなくっちゃ!

それにしても、マクドナーの新作、観たいなぁ。
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英語は間違いなく難しいけど、2月〜5月にNY来る人、要チェック。